54歳差のふたりの珍道中が、観客を優しい気持ちにさせる。

文:渡辺 亨

ヌーヴェル・ヴァーグの嚆矢とも言える、鮮烈な1955年の長編映画『ラ・ポワント・クールト』でデビューした女性監督のアニエス・ヴァルダ。世界各地で撮影した人々の巨大ポートレートを、グラフィティのように壁に貼り付けて展示してきた自称「photograffeur」のJR。このふたりの年齢差は、実に54歳。ところが、ふたりは出会ってすぐに意気投合し、一緒にフランスの田舎を旅しながら映画をつくることになった。ただし、旅の条件は、「計画しないこと」。『顔たち、ところどころ』は、こんなでこぼこコンビの珍道中が描かれたドキュメンタリー映画である。 彼らは、写真撮影ブース付きのJRのトラックに乗って、フ...

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