心をなぞるようにして、新しい室内楽に挑む。

幼い頃から大きな目標を掲げて一途に研鑽を積んできた人が、ふと自分が選んだ道に疑問を抱くというのは、珍しい話ではない。3歳の時からピアノを弾き、音楽家を志してきた中野公揮の場合、心が揺れたのは高校時代。 「僕はピアニストを目指していたんですが、映画や美術など芸術全般に興味をもち始めたのをきっかけに、他人が書いた曲をただ再現することに満足できなくなった。なにかを創作したいと思うようになって、ピアノをいったんやめてしまったんです。もともと譜面通りに弾くのが苦手でしたしね(笑)」  そう語る彼が、悩んだ挙句に選んだのが作曲だ。東京藝術大学作曲科に進んだが、ほとんど通わずに曲を書いてはライブで独...

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