現代的なディテールによって、普遍的な物語が輝きを増す。
ありふれた物語である。 ロック・ミュージシャンになる夢を諦めて、中古レコード店を経営するさえない中年男フランクと、地に足がついたその娘サム。医師を志すサムが、父とは異なる夢に踏み出そうとしたその瞬間、親子が戯れでつくったオリジナル曲がインターネット上で評判を呼ぶようになる。我が子に優れたミュージシャンだった亡き妻の才能が受け継がれていると信じるフランクは、これを機にふたりでロック・シーンに再参入しようと俄然張り切り始めるのだが……。物語の結末は、予想通りだ。 しかし新鋭ブレット・ヘイリーが監督したこの『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』、ディテールがいちいち新しい。物語の舞台...
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