「すべては彫刻だ」と言った男は、 大地に己を見出した。

文:高瀬由紀子

イサム・ノグチとは、こんなにもエネルギッシュで、頑固で、不屈の精神に満ちたアーティストだったのか。注釈を除く2段組の本文だけでも500ページ近くにおよぶ、分厚い評伝本から伝わってくる熱量に圧倒される。  20世紀を代表する彫刻家の生涯は、とにかく波瀾万丈だ。アメリカ人の母と日本人の父との間に生まれ、日本での少年時代を経て単身アメリカへ。以来、彫刻家コンスタンティン・ブランクーシの助手を務めたパリ留学、フリーダ・カーロと激しい恋に落ちたメキシコ滞在、第2次大戦中にアリゾナの日系人強制収容所で過ごした日々、戦後に日本の女優・山口淑子と北鎌倉で過ごした新婚生活など、絶えず東西を往来しながら...

続きを読む