産卵中の姿を見た者がいない⁉ 謎めくウナギを解き明かす『ウナギが故郷に帰るとき』。

文:一ノ瀬伸

【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】 ヨーロッパウナギの生態はいまだ謎が多い。産卵中の姿を見た者がなく、生殖する際に故郷に戻るとされるが、その年齢に個体差が大きい理由は不明だ。幼少期に父親とよくウナギ釣りに出かけたというスウェーデン人ジャーナリストの著者は、謎に魅了されたひとり。過去のウナギ研究者の奮闘や神話との関わりを挙げてウナギの一生を解き明かしながら、その姿を人間に重ね、生きて死ぬことの意味までを哲学的に問う。2020年、「ニューヨーク・タイムズ」紙の「注目すべき本100」に選出。 家族の死、パンデミック、ロックダウン──。 大江千里が渡米後3冊目となるエ...

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