日本のファッション・デザインに、挑戦してきた巨匠の軌跡。
目を引く装丁だ。思わず手にとってしまう。白いハードカバーの表紙と背表紙に、漢字を一切使わずにタイトルと著者名が記されている。装丁を手がけたのがアート・ディレクターの浅葉克己、図版はグラフィック・デザイナーの横尾忠則と聞き、「大人向けの絵本なのだろうか」と軽やかにページをめくっていく。すると、そこに表れたのは、意外にも硬質な文体だ。情感に流されず、あるひとりの人物の思想と行動を伝えようとする、クリエイティブ・ディレクターの小池一子の抑えた文章で、最後まで通されている。 タイトルの「イッセイさん」とは、ファッション・デザイナーの三宅一生のことだ。本書は彼を学生時代から知り、活動をつぶさ...
続きを読む