ヒップホップの才人が放つのは、想定外にレトロなサウンド

文:山澤健治

トランプ政権が誕生した2017年、アメリカ社会は混乱と荒廃に直面した。その激動の波は音楽シーンにも到達し、史上初めて「ヒップホップ/R&B」がアメリカでの音楽消費の占有率で「ロック」を抜き1位となった。アメリカで最も人気のあるジャンルとなった「ヒップホップ/R&B」アーティストらが中心となって発信する、人種差別反対を唱える〝ブラック・ライヴズ・マター〞のような運動が盛り上がりを見せたのは、激動の時代への反発の表れでもあるのだろう。  そんな17年に最大のセールスを記録するヒップホップ作となった、ケンドリック・ラマーのアルバム『ダム』全14曲のうち8曲で...

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