黒人カップルの受難を描いた、人生の「痛み止め」

「幸福とは不幸でないこと」というシニカルな定義があるように、幸福は不幸とのコントラストによって輝きを放つ。その文脈に沿って本作を形容すれば、とても不幸で幸福なカップルの映画と言えるだろう。 前作『ムーンライト』がアカデミー作品賞を獲得したバリー・ジェンキンス監督の新作は、彼が敬愛する作家ジェイムズ・ボールドウィンの小説を原作とし、1970年代のニューヨークを舞台にした若き黒人カップルの物語。彼氏がレイシストな警察官により婦女暴行の疑いで投獄され、彼女と家族は彼の無実の罪を晴らすべく奔走する。しかも彼女は身重で、日々大きくなるお腹を抱えて留置所に通い詰め、ガラス越しにふたりの愛を確認する...

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