重々しさと逆のアプローチで、心を揺さぶる戦争映画『ジョジョ・ラビット』。

ビートルズの『抱きしめたい』のドイツ語バージョンが鳴り響く冒頭から、すっと吸い込まれてしまう。舞台は第2次世界大戦末期のドイツの小都市。ナチの青少年部隊に参加する少年と彼の家の屋根裏に隠れ住んでいた少女の物語だ。ファシズムと戦争を背景にするが、映画はユーモラスかつ詩的な美しさも湛えて、軽快に進んでいく。すべてのシーンにタイカ・ワイティティ監督の美意識が張り巡らされていて、一瞬たりとも目が離せない。 ナチに憧れる少年は母親が密かにかくまっていたユダヤ少女を発見する。通報すれば、母親と少年も処刑されるというジレンマの中で、ふたりは契約関係を結ぶ。彼女を通してユダヤ人研究を始めた彼がつくる、...

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