古代の壁画からグルスキーまで、アートから見える本の意義。

本の内容が覚えられない。研究職を生業とする身には致命的だと思うのだが、とにかく読んだ端から内容を忘れてしまう。本屋で数ページ眺めて面白そうなので買って帰ると、家に同じものがあって、しっかり読んだ痕跡があるのだから自分でも呆れてしまう。 それでもとにかく読む。ひたすら読む。ベッドでも風呂でもトイレでも、気が付けばいつも目で活字を追っている。しかしそれでも、日本で1年間に新たに出版される本が7万冊に上ると聞くと、わずかな数しか読めずに死ぬことに虚しささえ感じてしまう。 西洋美術史に「ヴァニタス」という図像がある。「虚しさ、儚さ」といった意味の主題なのだが、そこに骸骨や砂時計などの定番モチー...

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