木工芸初の人間国宝! 『京の至宝 黒田辰秋展』は、京都のものづくりの深淵に触れるチャンスです。

文:小長谷奈都子

京都・祇園に生まれ、木工芸における初の人間国宝となった木漆工芸作家、黒田辰秋(1904ー82)を知っていますか? 京都大学北門前のベーカリーショップ「進々堂」店内の楢材のテーブルセットや、祇園の老舗菓子舗「鍵善良房」の重量感のある大飾棚、河井寬次郎記念館の表看板の彫り。京都ツウなら一度は目や耳にしたことのあるこれらの作品は、黒田辰秋の手によるものなのです。 塗師屋の末子だった黒田は、10代の頃から木漆一貫制作を志し、20代で出会った河井寬次郎、柳宗悦から影響を受けます。その後、鍵善良房や進々堂など京都の注文主に支えられた制作活動を展開。白洲正子や志賀直哉ら文化人からも愛好され、晩年...

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