“図鑑”にとどまらない美しさ。『川原慶賀の植物図譜』展で超絶写実を堪能しよう。

文:坂本 裕子

鎖国下の江戸後期、唯一オランダとの交易が許され、日本人の立ち入りも厳しく制限されていた長崎出島。ここに出入りを許され、オランダ商館の求めに応じて画を描いていた人物がいました。 彼の名は川原慶賀。長崎で活躍したこの絵師の記録はほとんど残っておらず、生涯は謎に包まれています。しかし、当時商館付きの医師として来日していたシーボルトにその才を認められ、日本の生活や風俗、自然を描いて、彼の日本研究に大きく寄与したのが慶賀でした。あまり国内では知られていないその作品は、オランダをはじめ、ドイツ、ロシアなどヨーロッパ各地に収められているそうです。中でも、特に植物に強い興味のあったシーボルトに応え、西...

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