圧倒的な存在感が表わす人間の根源。「遠藤利克―聖性の考古学」の生と死の畏怖と歓喜。

⽂:坂本裕⼦

美術館の展示室いっぱいに置かれる炭化した木の巨大な塊。真っ黒に焼け焦げた木肌、円環を基本としたシンプルな形態。圧倒的なそのスケールと迫力は、そっけないほどに粗野ながら、どこか懐かしいもの哀しさをまとい、強い印象を残します。 作者は遠藤利克。ヴェネツィア・ビエンナーレやドクメンタにも出品、北欧と英国での巡回展の経歴を持ち、2009年には円空賞も受賞した、国内外で高く評価される彫刻家です。 彼の大規模な個展が、埼玉県立近代美術館で始まりました。関東の美術館では実に26年ぶりとなるそうです。2010年代に制作された作品を中心に、美術館の展示空間に合わせてつくられた新作を含む12点で構成さ...

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