「絵巻マニア列伝」で、いにしえの愛好家の情熱とともに絵巻の醍醐味を満喫しよう。

文:坂本 裕子

詞書と絵が合体した「絵巻」。そもそもは中国から伝来したものですが、日本で独自の流行と発展をみた芸術様式です。遺されている名品の数々も、いまでは残念ながらガラス越しに広げられたシーンだけしか楽しむことができませんが、かつては手に取り、右から左へ、少しずつ巻き取りながら読んでいました。さながらそれは、現在の漫画やアニメーションの世界。高僧のエピソードや寺の縁起を、政変や事件、軍記を、あるいは妖怪や鬼退治の活劇を、そして季節を追った年中行事の華やぎを、庶民のちょっと下世話な滑稽を、臨場感あふれる画とともに物語ります。当時一流の画師や書家により、豪華な金彩や絵具、詞書に彩られた絵巻は、手にでき...

続きを読む