挑発を秘め、東京という都市の破片を写した、森山大道の新作写真集『K』を見よ。

文:赤坂英人

現代の日本を代表する写真家である森山大道が、新作の写真集『K』(月曜社)を発表しました。それは百数十点のモノクローム写真で構成された古典的美しさをもつ写真集であり、同時に森山の新しいステージを予感させるような、挑発と鋭い剣先を秘めた写真集と言えるでしょう。森山が撮影したものは、東京という巨大な都市の中にある無名性の空間であり、路地の片隅、誰もがその存在に気づかない都市の破片、まさに世界のフラグメントのような光景です。そこでは過剰なノイズは聞こえない。むしろ、抑制されたソリッドな電子音が響いているのみです。写真集の題名の『K』とは、「景」のことにほかなりません。 独断と偏見で言わせてい...

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