伝統に学んだ建築家は、
現代の日本らしさを探る。

笠井爾示(MILD)・写真 photograph by Chikashi Kasai 山田泰巨・文 text by Yoshinao Yamada

数寄屋大工の修業を経て建築家へ。日本の伝統的な意匠や素材、技法を学んだ建築家の佐野文彦は、それらを大胆に取り入れた空間設計やインスタレーションの設計で注目を集めている。 高校時代は陸上に明け暮れ、卒業後は競輪選手を目指していたという。しかしその後進路を見失っていた。佐野はある日、運命を変える出合いを果たす。以前から心惹かれる建物があり、思い切ってその扉を開けてみたのだ。扉の向こうに並んでいたのはミッドセンチュリー期のアメリカや北欧の名作家具。それに一目惚れして、その家具店で働くことに。やがて店の母体が数寄屋建築で名高い中村外二工務店であることを知る。家具に続き、今度は建築がもつ可能性...

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