国内初個展「シャセリオー展」で、夭折の天才が生んだ品格と憂愁の美を味わう。

文:坂本 裕子

フランス新古典主義の巨匠アングルに「やがて絵画界のナポレオンになる」と言わしめ、若干16歳でサロンにデビューしたテオドール・シャセリオー。その才能は、師アングルを離れて新しい世界へとはばたきながら、わずか37歳で急逝、開花半ばで途絶えました。遺された作品数はわずか260点前後、所在不明なものも多く、本国でもまとめて観られる機会は稀だそうです。 その代表作を含めた油彩約40点に、貴重な水彩・素描と版画を集め、知られざる夭折の天才シャセリオーを堪能する、日本初の本格的な個展が東京・国立西洋美術館で開催中です。 19世紀フランスは、ナポレオン帝政期を経て共和制を取り戻す激動の時代。絵画でも...

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