「リアル」とはなにか? 『アドルフ・ヴェルフリ』が突きつける「世界」認識への問い。

文:坂本 裕子

アール・ブリュット。フランス語で「生(き)の芸術」を表すこの言葉は、正規の美術教育や既存の芸術の影響を受けずに、きわめて高い独自性で生み出された芸術をさすものとして1940年代に画家ジャン・デビュッフェが提唱しました。英語で「アウトサイダー・アート」とも呼ばれます。このアール・ブリュットの画家として彼が最も支持し、現在世界的にも高く評価されながら、日本ではほとんど知られていないアドルフ・ヴェルフリの、日本初の大規模個展が東京ステーションギャラリーで開催されています。 1864年、スイス・ベルン郊外の貧しい家庭で7人兄弟の末っ子に生まれたヴェルフリは、酒癖の悪い父と病弱な母の下、幼い時...

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