世界では自動車の電動化がスピードアップしている。電動車というと、すこし前は、まさに未来的なルックスで、デザインで冒険しているクルマ、という印象があった。それが大きく変わってきているのが、とてもおもしろい。見た目はふつう。乗ってもふつう。これが昨今のトレンドで、とりわけ日本のメーカーは、誰でも違和感なく操縦できるナチュラルなドライブ感覚を重視しているのだ。それでいて、アクセルペダルを踏みこんだときの加速感だったり、質感の静けさだったり、EVならではの特長があって、なかなかヨイ。
たとえば、トヨタ自動車。「電動車のフルラインアップ化の一環として2025年までにEV15車種を導入する計画を推進中」とする。2021年に中国・上海で開催された自動車ショーではEVの新シリーズとして「TOYOTA bZ」を発表するなど、鼻息が荒い。レクサスもこの電動化戦略の重要なパートナーで、2020年10月22日に発売された「レクサスUX300e」というピュア電動SUVを体験すると、誰でも乗れるEVとして出来のよいことが印象ぶかい。
アクセルペダルを踏んだときのクルマの出足のよさ、ステアリングホイールを操作したときのクルマの動き、それに快適な乗り心地と、静かな室内。仕上がりがよい。欧州には、アクセルペダルを踏む力をゆるめると、グッと強めの制動がかかる”回生ブレーキ”を積極的に使う、専門用語でいうところの”ワンペダル操作”を重視するメーカーもあるいっぽう、レクサスは、減速や停止はあくまでも従来のエンジン車(ICEと呼ぶ)と同様に、というポリシーを貫いている。クルマが電動化すると個性がなくなると言われてきたものの、こういうところにメーカーの考えの違いがちゃんと出るのだ。
ナチュラルなピュアEVといえば、21年1月28日発売の「マツダMX-30 ev model」も同様だ。このクルマのユニークなところは、ICE(エンジン車)だと変速機のシフトアップとダウンを行うパドルを使って、走行抵抗を減らしたり、逆に少し増す設定の採用にある。左手のパドルを引くと加速性がよくなり、右では減速感が出る。「それによって、マニュアルシフトの楽しさを味わっていただきたい」とはマツダの開発者の言だ。フリーダムドアという観音開きのドアが、クーペ的なボディの使い勝手をよくしているし、日常使いで好きになれる1台だ。
2019年の東京モーターショーで大きな話題を呼んだあと、20年10月30日に発売された「Honda e(ホンダイー)」もピュアEV。こちらの特徴は、全長3895ミリと比較的コンパクトなボディによる市街地での取り回しのよさと、活発な走り、それに大型の液晶モニターをフルに活用した、まるで”走るスマートフォン”のようなコネクティビティ(データのやりとり)の高さと、いろいろあげられる。もうひとつ、カメラを使ったデジタルアウトサイドミラーも特徴的。キワモノと思われるかもしれないが、実際はたいへん使いやすい。
EVとか電動車というと、モーターをバッテリーで駆動して走る、外部充電可能なクルマ、と思われがち。でも、実際は、種類が豊富。たとえば、ハイブリッドもモーターを使って走るのでEVの一種だし、日産が20年12月23日に発売した新型「日産ノート」は、レンジエクステンダーといい、駆動はモーターであるものの、駆動用バッテリーへの給電(充電)は、電源でなくエンジンで行う。メリットはサービスステーションさえあれば走れなくなる不安がないこと。新型ノートは力強く走る。エンジンの重さも感じない。ナビと連動した独自の運転支援システム「ProPILOT」も選べる。乗っていると、からだがノートの運転感覚にすぐ馴染んでしまう。ドライブが好きなひとは4WDモデルを試してほしい。
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もうひとつのEVが、燃料電池車「トヨタMIRAI」。専用のステーションで水素を(まるでガソリンのように)充填して、それを燃料電池のシステムを通すことで科学反応させ電気を取り出す。バッテリーに充電し、駆動用モーターを使って走る。20年12月9日発売の2代目MIRAIは、「FCV(燃料電池車)だから何かをガマンするのでなく、積極的に走りも楽しんでもらいたい」というトヨタ自動車の開発者の言葉どおり、パワフルな後輪駆動車としてドライブが楽しめるクルマに仕上がっている。水素ステーションは東京以西で数が増えてきているものの、長野とか東北方面へのドライブが多いひとは、ステーションの場所(と営業時間)に注意して。