写真家たちは、いま“東京”をどう切り取るのか? 東京都写真美術館で開催中の企画展が見応えあり。
オリンピックや小池百合子都知事など何かと話題の東京ですが、その「東京」をテーマにした写真展「東京・TOKYO 日本の新進作家 vol.13」が開催され、充実したものとなっています。この新進作家のシリーズは、東京都写真美術館が毎年気鋭の若手作家を中心に開催している企画展ですが、今年はテーマと写真家のセレクションがうまくかみ合い見応えのある展覧会となっているのです。
セレクションされた写真家は中藤毅彦、小島康敬、田代一倫、元田敬三、野村恵子、佐藤信太郎 の 六人。実力もありいずれ劣らぬ個性派ばかりです。闇と光が交差する モノクロのスナップショットにかける中藤。「無機質がでどこか嘘っぽくもある」東京の都市の表情を撮る小島。 バイトの休憩時間に同僚や通りがかりの人の肖像を撮る田代。「写真とは行為であり恋である」という元田はストリートでツッパル人間にレンズを向ける。そして佐藤は、新たな東京のメルクマールとなった東京スカイツリーを介して見えてくる、東京独特の雰囲気に目をむけます。
そしてもっともこころに残ったのは野村恵子のカラー写真のシリーズです。それは彼女の主観と客観、風景とポートレートが溶けあったようなエロチシズムを感じさせる作品です。彼女はこんなテクストを書いています。
「夜が明ける。朝の光が窓に満ちて、今日が流れていく。秋がきて、冬を越え、春になれば、また桜は見事に咲き誇り、季節は繰り返し繰り返し、 巡りくる。変わらないであろう循環がある。此処にあるその光りに、幸せに、痛みに、傍にいる身体に、今の生を感じてみる、こころに映った光景を記憶していたい、撮りたいと衝動することは、ある本能に添う行為でしかない」
東京という流動し変化し続けるメガロポリスと、その得体の知れない街に対して、一人ひとり個性的なスタンスでシャッターをきる写真家の息づかいを伝えるような写真展となっています。(赤坂英人)
総合開館20周年記念 東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13
開催期間:〜2017年1月29日(日)
開場時間:10時〜18時(木・金は20時まで、入館は閉館時間の30分前まで)
会場:東京都写真美術館
東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内
TEL:03-3280-0099
休館日:月曜日
料金:一般¥700、学生¥600、中高生¥500
https://topmuseum.jp