北条政子も愛したと伝わる国宝が修理後初公開!「神の宝の玉手箱」展で“箱”が放つ聖性と魔力に酔いしれてみませんか?
「玉手箱」と聞いてまず思い浮かぶのは『浦島太郎』ではないでしょうか? 乙姫から別れ際に手渡され、開けると煙で老人になってしまう魔法の箱。そこには彼が龍宮城で過ごした“時”が詰まっていたのでした。
「玉手箱」とは“玉なる手箱”の意。浦島が手にした箱にも豪華で美しい意匠が施されていたのでしょう。所有者の身分や収納品の価値が高ければ高いほど美しく仕立てられる箱は、時に神性さえも帯びて語られます。「手箱」はその代表格で、貴人の手回り品を入れるものがその時の最高の装飾技術で飾られ、愛でられ、奉納されてきました。特に中世のものは、貴族階級の台頭と、蒔絵や螺鈿など漆芸の技法が出揃い凝縮されたことで、みごとな作品が遺されています。
このたび、北条政子が愛したと伝えられ、サントリー美術館が所蔵する国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》が約50年ぶりの修理を終えて美しくよみがえりました。そのお披露目とともに、各地に遺る珠玉の手箱を紹介する展覧会が開催されています。雲上人が愛用し、神への贈り物として造られた美しい手箱たちを驚嘆の技法とともに堪能する、きらびやかな空間です。
5章の構成は、貴婦人の化粧箱から発展し、贅を尽くした造りから箱そのものが愛蔵されるようになった華麗な作品を紹介する「玉なる手箱」からスタート、一気に中世の雅へ引き込まれます。美しい箱たちは、その美ゆえに “開けてはいけないもの”という禁忌の念すら抱かせます。「手箱の呪力」では、箱がまとう呪術的な側面を、仏像内に納められていた化粧道具や箱をめぐるふしぎ譚の絵巻で感じます。「生活の中の手箱」では、実用されていた手箱の姿を、平安時代の資料や内容品の鏡箱や香合などで確認します。そして「浮線綾文と王朝の文様」の装束や工芸作品に、平安以降に家格や位階によって定められていた有職文様の在り方を学びます。最終章「神宝と宮廷工芸」は、神々に使用してもらうことを願って奉納された「神宝」の貴重な手箱と服飾調度品が飾ります。
トピック展示では、近現代の名工たちが手がけた、国宝の数々やウィーン万博からの帰途に船の座礁で海底に沈んだ幻の手箱などの模造作品が並びます。模造・・・とあなどらないで。伝統技術の伝承をめざしてその造形精神までを追求した成果は、当時の輝きを再現し、手箱の魅力をより感じられる精度です。究極の手わざの粋、手箱が放つ美と妖の魅惑とともに味わってください。
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「神の宝の玉手箱」
~7月17日(月・祝)
開催場所:サントリー美術館
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
開館時間:10時~18時(金・土および7/16は20時まで開館)
(入館は閉館30分前まで)
休館日:火曜(ただし7/11は開館)
TEL:03-3479-8600
入場料:1300円
http://suntory.jp/SMA/