東京初、屋外で楽しむ写真の祭典、『T3 PHOTO FESTIVAL ...

東京初、屋外で楽しむ写真の祭典、『T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO』が始まります!

文:坂本 裕子

ストックホルム出身のエヴァ・ステンラムの作品「Drape」は2011年から現在まで制作されているシリーズ。1950年、60年代のピンナップ写真がモチーフの女性身体はその一部しか見ることができません。作家は見えることと見えないことを意図的に織りまぜ、見る者の視線をコントロールすることで、「見る」ことと「見ることへの欲望」の関係を問いかけます。 エヴァ・ステンラム © Eva Stenram, Drape I, Courtesy of the artist

FacebookやInstagramなど、SNSとスマートフォンの普及は、「写真」を、言語を超えた世界共通のコミュニケーション手段のひとつに変えました。ゴールデンウィークの行楽先も、ベストショットを撮れる場所が人気の上位を占めたのだとか。そんな身近な表現となった「写真」で、2020年を視野に東京から文化を発信する、初めての屋外型フォトフェスティバルがまもなく開催です。

「T3  PHOTO FESTIVAL TOKYO」と冠する本イベントの「T3」とは、アメリカの社会学者リチャード・フロリダが、都市の繁栄に必要な条件として挙げた3つの要素、「才能(Talent)」「技術(Technology)」「寛容性(Tolerance)」にちなんだもの。世界的に「寛容性」の矮小化が危ぶまれている中、多様な価値観を認められる都市の在り方を東京から提示できないか、との考えから、共通言語としての「写真」が選択され、屋外での開かれた展示が決定しました。

東京・上野公園を中心に、いま若いアーティストたちにも注目される桜木・谷中周辺と、東京藝術大学を巻き込んだ、エリアまるごとの展覧会、まさに“フェスティバル”です。内容は、国内外の9人の写真家の作品を上野公園ほか、周辺エリアや施設で展示する「Invisible Stratum ‐見えない地層-」、東京国際写真コンペティション受賞者展「-ORIGIN-」、そしてパートナー展示として、「おとなになったら」/「分かちあう人々」 ― 国連人道問題調整事務所(OCHA)の3つの企画展で構成されます。「見えない地層」では、わたしたちの「見るということ」をテーマに、この世界に存在している「目には見えない様々な層(=レイヤー)」について問いかけ、あるいは可視化することを試みる写真作品を展示します。“起源”をテーマにした今回のコンペティション「-ORIGIN-」では、過去と現在をつなぎ、未来へのまなざしを持つ8人の作品が、1300人から選ばれています。展示には建築家も参加、屋外で彼らの作品をどのように見せているのか、その創意も楽しみです。

世界を見つめ、世界を露呈し、世界に問いかけを発する、同世代を生きるフォトグラファーたちと生きている環境との10日間の競演。爽やかな五月の風に吹かれ、公園を散策しながら写真作品と出逢う時空に、日暮れも長くなるこの季節、休日はもちろん、会社帰りにふと足を踏み入れてみるのはいかがでしょうか?

見るという経験に伴う複数の層=レイヤーについて考察する鈴木理策の作品は、上野公園の噴水池の中に展示されます。カメラという機械の眼が写しだした像を見るとき、わたしたちは撮影者の眼差しや外界の揺らぎ、そしてそこから喚起される記憶をも幾重にも統合させて再び「見る」とことを経験します。 鈴木理策 《水鏡 16,WM-628》2016年 © Risaku Suzuki, Courtesy of Taka Ishii Gallery

山本渉は自然と人間の関係やその境界を写真により視覚化することを試みてきました。こちらは植物の葉に高電圧をかけることで発生する「コロナ放電」の現象をフィルムに定着する「キルリアン写真」と呼ばれる技法の作品。上野公園の楠の葉を採集して作品を制作し、葉を採集した楠の幹に作品を展示、肉眼では見えない世界と写真と化学の関係性への思索を促します。 山本渉《光の葉》2012年 © Wataru Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

宇佐美雅浩が20年以上継続しているシリーズ「Manda-la」。そこには様々な地域や立場に置かれた人々が一個人を中心にして曼荼羅のように一枚の写真に配置されます。近年では、社会や歴史問題により深く関わる対象を被写体とし、目に見えない事象や彼らの声にならない声を描き出しています。 宇佐美雅浩 左:《早志百合子 広島 2014》/右《大塚健 秋葉原 東京 2013》 © USAMI Masahiro, Courtesy of Mizuma Art Gallery

視覚体験に潜む「幻覚」と写真に表われる「現実」や「真実」の境界を謎かけのように提示するアーティストユニット、Taiyo Onorato & Nico Krebs。上野公園内の木々の間に展示される作品は、カメラによって初めて可視化できるものと現実の対象との奇妙なズレを露わにします。等身大のそれは、まさに幽霊のように樹間にひっそりと佇んでいます。 タイヨ・オノラト&ニコ・クレブス 左から《Ghost 1 / Ghost 3》2012年 Courtesy the artists, RaebervonStenglin and Sies+Höke Gallery

「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」

開催期間:5月19日(金)~5月28日(日) 10時~18時
開催場所:上野公園、東京藝術大学(トークイベント)、上野桜木あたり、市田邸
5/22(月)は、「上野桜木あたり」「市田邸」は休館
TEL:03-5524-6991(平日10時~17時)
入場料:無料

http://t3photo.tokyo/

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