オンでもオフでも活躍する、「ハイブリッド」なシューズ(後編)

  • 写真:尾鷲陽介
  • 文:小暮昌弘
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いま注目を集める、機能派ドレスシューズの特集です。後編は靴専業ブランドから厳選してご紹介!

「コール ハーン」の新作は、アッパーもソールも超モダンなウイングチップ

「コール ハーン」は1928年に創立されたアメリカを代表するシューズブランド。「クーパー スクエア ウィングチップ」は、伝統的なデザインをモダンにアレンジした同ブランドらしい一足です。アッパーのデザインはベーシックなウイングチップのデザインですが、同色の表革とグレインレザーとスエードをコンビネーションにした、非常に手の込んだ素材づかいが特徴。ソールはさらに手がかかっており、シースルーのTPU製ミッドソールを2層のレザーで挟み込んだ独特のつくりになっています。シースルーのソールが接地面ではそのままアウトソールの一部となり、ビジュアル的にデザインされているのも大きな特徴。しかもこのソール、クッション性に優れているだけでなく、ウェット&ドライの地面に対しても確かなグリップ力を発揮してくれます。ソールのエッジをナチュラルカラーに仕上げている点もデザイン上のアクセントに。ソールのレザーの色に合わせたエクストラシューレースも付属し、色はほかにネイビーとブラックも展開されています。
外羽根の部分をスエードに、パーフォレーション(穴飾り)までは表革を使い、ほかの部分は型押しのレザーが使われています。ステッチもアクセントに。
スニーカーなどによく見られる、ソールを完全にヴィジブル化したデザイン。ヒールの意匠も洒落ています。

ウイングチップシューズ「クーパー スクエア ウィングチップ」¥47,250/コール ハーン(コール ハーン ジャパン)

問い合わせ先/コール ハーン ジャパン TEL:0120-56-0979

「HIROSHI TSUBOUCHI」のポップなハイブリッドシューズは、走れる革靴

クラシックや過去のアーカイブからインスピレーションを得て、現代的な靴をデザインする「HIROSHI TSUBOUCHI」がつくった「走れる革靴」です。伝統的な造形のアッパーにスニーカーソールをドッキングさせたモデルですが、アッパーは長く革靴を製造してきた同ブランドらしいつくり。ラスト(木型)の設計から、パターン、釣り込みなどの製法までクラシックな革靴と同じ手法で、フィッティングを重視しているのが特徴です。スエード素材も英国の名門タンナー(なめし革工場)のチャールズ・F・スタッド社製のスーパーバックというスエードを採用、ソフトで美しい毛足が特徴といえます。それに対して、ソールは一体成形の機能的なデザインで、ヒールカウンターまで付いた本格的なスニーカーソール。白の色合いもスポーティな雰囲気を醸し出しています。ソールには、中の空気を逃がしてくれるハトメ穴、外側のソールはメッシュ構造で、通気性が考えられています。本格的なランニングに使うにはお洒落過ぎますが、走れるほどの機能性を備えた、イノベイティブな革靴といえます。
スニーカー同様に、インソールは取り外し可能。クッション性とホールドを重視したつくりです。
屈曲性とグリップ力を備えたソール。中央は通気性を考えてメッシュ素材が使われています。

ウイングチップスニーカー¥23,100/HIROSHI TSUBOUCHI(オリエンタルシューズ)

問い合わせ先/オリエンタルシューズ TEL:0743-55-1112

ノーザンプトンの名門「トリッカーズ」がデザインした斬新なカントリー靴

「トリッカーズ」は、英国靴の故郷といわれるノーザンプトン生まれの老舗で、創業が1829年。英国王室御用達で、チャールズ皇太子から御用達のワラントを授かるメーカーで、職人的な手法で靴をつくり続けています。クラシックな靴を数多く製造していますが、圧倒的な人気を誇るのが、武骨なデザインのカントリーシューズです。この「バートン」はその代表作。今回紹介しますこの靴は、ソールをレザーとイエローのラバーソールのコンビネーションにして、カジュアル的にデザインしたものです。アッパーの素材は英国の名門タンナーのチャールズ・F・スタッド社製のミッドナイトブルーのスエード。白のシューレースもカジュアルさを演出します。ソールは、英国ITSHIDE社製のコマンドソールで、ソフトさとグリップ力を兼ね備えたものですが、やはりこの色が大きなアピール力を発揮しています。英国靴というと、レザーソールで本格的なものを買い、徐々に履き慣らすというのが一般的ですが、こんなポップで歩きやすい靴なら、ファッション性も表現できます。グッドイヤーウエルト製法ですので、ソールの張り替えも行えます。カジュアルな色合いを十分楽しんだら、オーソドックスなソールに戻すことも可能です。
これまでの伝統的な英国靴では考えられなかったイエローのカラーソール。ソールも英国製です。
インソールに入った輝かしきロイヤルワラントのマーク。チャールズ皇太子も愛用するブランドです。

ウイングチップシューズ「バートン」¥66,150/トリッカーズ(バーニッシュ)

問い合わせ先/バーニッシュ TEL:03-3468-0152

世界で唯一、自社でラバーソールを製造する「パラブーツ」の自信作。

フランスの「パラブーツ」は、コンフォタブルで堅牢なラバーソールの靴で有名です。創業者レミー・リシャール・ポンヴェールがフランス東部イゾーで小さな靴工房を開いたのは、1908年。彼が手がけた職人的なつくりの登山靴は、瞬く間に人気を集めますが、1927年にはブラジルのパラ港から輸入された良質な天然ラテックスに着目、自社でラバーソールの製造を始めます。そして自社製のラバーソールと登山靴の要素をミックスさせた革靴の製作をスタート、ブランド名もブラジルのパラ港にちなんでパラブーツとしました。登山靴に見られるノルヴェイジャン製法などの職人的な技法と独自のラバーソールで、世界的な人気を集めるブランドへと成長しました。今回紹介する「DAX(ダックス)」は、フレンチタイプの洗練されたデザインのローファーです。もちろんソールはラバーですが、「Galaxy Fine Sole」と名付けられたソールは、歩きやすい屈曲性を実現するために、ウエスト部分を極限まで薄くしてあります。グッドイヤーウエルト製法でありながら、ドライビングシューズのようにしなやかに曲がり、足に沿うようにフィッティングしてくれるのです。色はほかにも薄ベージュ、タバコ、こげ茶があります。
エレガントさを演出する、人気のネイビースエード。ラウンドしたつま先のデザインに、フランスらしさを感じます。
ソールの堅牢さは素晴らしいのひと言。滑らず、減りにくいことでも知られます。

ローファー「DAX」¥49,350/パラブーツ(パラブーツ青山店)

問い合わせ先/パラブーツ青山店 TEL:03-5766-6688

日本の職人技とモダンなデザインを組み合わせた「三陽山長」

熟練の「技」、「匠」なものづくり、「粋」な心遣いといった、和の精神をベースに、メイド・イン・ジャパンの靴づくりで定評ある「三陽山長」。伝統的な革靴で多くのファンをもつこのブランドにも「ドレススニーカー」と呼ばれるハイブリッドシューズがラインアップされています。2011年に発表されたモデルはグッドデザイン賞も受賞していますが、今季の新作が「優斗(ゆうと)」。外羽根のウイングチップのアッパーに一体成形の機能的なソールが付くモデル。アッパーの素材は、日本製のカーフレザーを採用、撥水加工が施されていますので、雨の多い時期も安心して履けます。同じデザインでスエードのモデルもありますが、こちらはイタリア製の素材が使われています。ソールは、メゾンブランドのスニーカーソールをつくるイタリアの専業メーカーに特別にオーダーしたもので、同社のアイコン的な「山笠」のパターンが刻印されています。ほかにもストレートチップの「優二」、ダブルモンクの「優志」、チャッカブーツの「優伍」など幅広いバリエーションが展開されていますので、好みのタイプがきっと見つかるはずです。
「山笠」マークが刻印されたソールのパターン。「長」の漢字も使われています。
人間の足形に合わせたソールデザイン。くるぶし部分がフィットし、とても歩きやすいつくりです。

ウイングチップスニーカー「優斗」¥36,750/三陽山長(三陽山長 銀座店)

問い合わせ先/三陽山長 銀座店 TEL:03-3563-7841


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