語れる服 Vol.6:オーストリアの老舗帽子ブランド「ミュールバウアー」、2014年春夏コレクションのストーリー
ブランドを象徴する人気モデル
透け感が美しい黒のハット(上の写真、上段)は、「SINAMAY」という天然素材のテキスタイルが使われています。見た目に涼しく通気性も抜群によく、蒸しがちな日本の夏に最適な帽子です。軽い被り心地で、体に負担がかからない工夫が見られるのもクラウスらしいデザインといえます。ベージュのハット(上の写真、下段)は、ミュールバウアーで一番人気の定番の型「KARL」。ブリム(つば)とクラウン(本体)が異なる素材なのがお分かりでしょうか? このコンビネーションの切り替えは、クラウスがもっとも得意とするデザインです。
「異素材のコンビネーションこそが、ミュールバウアーのアイコンです。私がディレクターに就任したのが2001年ですが、翌年~2003年頃にはデザインのベースができあがりました。服装で考えてみたら、例えばシャツとパンツで異素材を組み合わせて着るのは普通のことですから、その発想を帽子に応用したのです」
「異素材のコンビネーションこそが、ミュールバウアーのアイコンです。私がディレクターに就任したのが2001年ですが、翌年~2003年頃にはデザインのベースができあがりました。服装で考えてみたら、例えばシャツとパンツで異素材を組み合わせて着るのは普通のことですから、その発想を帽子に応用したのです」
もう一つの人気が高いモデルが、上写真の「クラッシュド・ハット」。クシャッと潰れたようなフォルムをあらかじめつくることで、高級品でも気兼ねなく被れるようにした斬新な帽子です。
「美しい帽子を“破壊”しました。初めてつくったのは5~6年前だったかな、夏用のコレクションでした。夏は暑いから、帽子を脱いで手に持つことが多いものです。そのときにバッグの中に入れられるようにしたのが『クラッシュド・ハット』。単に柔らかい素材の帽子をお客さまが自分で潰してもいいのですが、なかなか美しい形に整えられないでしょう。そこで、私たちが独自に壊し、魅力的な商品に仕上げました」
クラウスのアイディアには、保守的な考えにとらわれないモダンなリアリティが息づいています。
「美しい帽子を“破壊”しました。初めてつくったのは5~6年前だったかな、夏用のコレクションでした。夏は暑いから、帽子を脱いで手に持つことが多いものです。そのときにバッグの中に入れられるようにしたのが『クラッシュド・ハット』。単に柔らかい素材の帽子をお客さまが自分で潰してもいいのですが、なかなか美しい形に整えられないでしょう。そこで、私たちが独自に壊し、魅力的な商品に仕上げました」
クラウスのアイディアには、保守的な考えにとらわれないモダンなリアリティが息づいています。
家業を継いで、デザインを変革
ストロー素材やフェルトの製品は、オーストリアのアトリエで生産されています。一部のファブリックを使った帽子は、彼らのアトリエで研修した職人が勤める同国内の工場製です。クラウスのデザインオフィスはアトリエと隣接しており、関係性は常に密のようです。彼が家業を継いだきっかけを語りました。
「若いころは遊んでばかりでしたよ(笑)。子供のときからアトリエに馴染みがあったけれど、デザイナーになるなんて思いもしませんでした。18歳で学校を卒業して、何となく帽子の学校に2年間通いパーツや生地をつくり、帽子製造の工程を学ぶうちに、デザインもやりたくなって。そして家のアトリエでデザイナーとして働き始めました。クリエイティブ・ディレクターになってからは、歴史的なミュールバウアーの姿をがらりと変革しました。100年間続くハンドメイドの上質な帽子という伝統はそのままに、今の時代に即した新しいスタイルを打ち出したのです」
「若いころは遊んでばかりでしたよ(笑)。子供のときからアトリエに馴染みがあったけれど、デザイナーになるなんて思いもしませんでした。18歳で学校を卒業して、何となく帽子の学校に2年間通いパーツや生地をつくり、帽子製造の工程を学ぶうちに、デザインもやりたくなって。そして家のアトリエでデザイナーとして働き始めました。クリエイティブ・ディレクターになってからは、歴史的なミュールバウアーの姿をがらりと変革しました。100年間続くハンドメイドの上質な帽子という伝統はそのままに、今の時代に即した新しいスタイルを打ち出したのです」
彼によって事業は拡大し、世界中に新生ミュールバウアーが発信されていきました。本国オーストリア国内では現在、直営店を2店舗構えるまでに成長。ファッショナブルな色づかいとベーシックなフォルムが融合するクラウスの帽子は、モード好きも、トラッド好きも虜にしています。前ページでも記述した定番「KARL」は、そんな今のミュールバウアーを代表する型です。最新のモデル(上写真、上段)では、クラウンに風を通す荒いメッシュ編みを用いて、ブリムにオーソドックスなストロー素材を配しています。
「KARLの形は、伝統的なオーストリア・スタイルとはいえませんが、ヨーロッパではわりとポピュラーに見られるもの。まさに“ザ・ハット”ですね。この帽子はブルージーンズ+白Tシャツの色合いをイメージしたデザイン。エレガントな素材を使っていますから、服装を選ばずに気軽に被ることができるでしょう」
「KARLの形は、伝統的なオーストリア・スタイルとはいえませんが、ヨーロッパではわりとポピュラーに見られるもの。まさに“ザ・ハット”ですね。この帽子はブルージーンズ+白Tシャツの色合いをイメージしたデザイン。エレガントな素材を使っていますから、服装を選ばずに気軽に被ることができるでしょう」
高級スニーカーを履いて、帽子はミュールバウアー
2014年春夏コレクションの中で最大の意欲作といえるのが、ストロー素材を使ったベースボール・キャップ。90年代リバイバルの流れでキャップの人気が再燃している今の時代感を踏まえつつ、高品位に仕上げたオリジナリティ溢れる傑作です。
「ハイストリートをイメージしてデザインしました。ロング丈のTシャツ+短パンの服装に似合う新しいスタイルの帽子です。私はいつも、ファッション全体のバランスを考えてデザインしています。バミューダパンツにパナマハットを合わせるスタイリングのように、この春夏は高級スニーカーを履いて、帽子はミュールバウアーのキャップというのがいい。ストリートでも、ワンランク上の繊細な着こなしを楽しんでいただきたいです」
「ハイストリートをイメージしてデザインしました。ロング丈のTシャツ+短パンの服装に似合う新しいスタイルの帽子です。私はいつも、ファッション全体のバランスを考えてデザインしています。バミューダパンツにパナマハットを合わせるスタイリングのように、この春夏は高級スニーカーを履いて、帽子はミュールバウアーのキャップというのがいい。ストリートでも、ワンランク上の繊細な着こなしを楽しんでいただきたいです」
2014年には創業から111年を迎えるミュールバウアー。これを記念したプロジェクトはあるのでしょうか。
「そうですね、2013年の110周年では何もやらなかったから、111周年ではいろいろと仕掛けたいと思ってます。まず、本を出版する計画が進行中です。ウィーンで10月末にギャラリーをつくる計画も進めています。日本ではミュールバウアーの本格展開を始めて10年が経ちます。この国でも、何か面白いことができればいいですね」
それでは最後に、日本の男性に伝えたいことを。
「この3~4年で、男性が上手に帽子を被るようになりました。それはとても嬉しいことです。もっと帽子を被りましょう、もっとセクシーにね。 Go & Try !」
「そうですね、2013年の110周年では何もやらなかったから、111周年ではいろいろと仕掛けたいと思ってます。まず、本を出版する計画が進行中です。ウィーンで10月末にギャラリーをつくる計画も進めています。日本ではミュールバウアーの本格展開を始めて10年が経ちます。この国でも、何か面白いことができればいいですね」
それでは最後に、日本の男性に伝えたいことを。
「この3~4年で、男性が上手に帽子を被るようになりました。それはとても嬉しいことです。もっと帽子を被りましょう、もっとセクシーにね。 Go & Try !」
Klaus Muhlbauer クラウス・ミュールバウアー
1903年にJulianna Muhlbauerがオーストリアのウィーンにほど近いフロリツドルフで創業した婦人帽子仕立屋が代々受け継がれ、2001年に4代目のクラウスがクリエイティブ・ディレクターに就任。約15人のアトリエスタッフらとともに帽子づくりを行っている。
問い合わせ先/アッシュ・ペー・フランス TEL : 03-5778-2022
Muhlbauer
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