Pen別注シングルモルト第4弾は、話題の信州マルス蒸留所と。

  • 写真:宇田川 淳
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いま世界のウイスキー愛好家から注目を集めている信州マルス蒸留所。この度、Penは、同蒸留所とのコラボで別注シングルモルトをリリース。中央アルプスと南アルプスに囲まれた長野県にある蒸留所へ訪れました。

日本一高い場所にある、小さな蒸留所。

信州マルス蒸留所は、中央アルプスと南アルプスが望める長野の美しい自然の中にあります。しかし、蒸留所のルーツは、実は鹿児島県。蒸留所を運営する本坊酒造は、鹿児島県の老舗焼酎メーカーであり、いまも本社を鹿児島県に構えています。では、なぜ長野県に蒸留所を建てたのでしょうか? 遡ること約66年前。1949年に本坊酒造はウイスキーづくりに着手し、1960年に山梨県に工場を創設しました。しかし、ワインづくりに注力するため、1985年に現在の場所へ蒸留所が移設され、長野県での蒸留を開始したというわけです。

 ところが酒税法の改正、ウイスキー級別廃止などが原因で、日本のウイスキー消費量は激減。1992年には、やむをえず蒸留をストップしたのです。しかし、ウイスキーブームがいよいよ到来したことで、2011年に操業を再開し、現在に至っています。ちなみに再開から3年が経った今年8月には、信州マルス蒸留所が復活してから初となるウイスキー「THE REVIVAL 2011 シングルモルト駒ヶ岳」が発売されました。スコッチウイスキーは、オーク樽で3年以上の熟成が必要と定義されています。つまり、再開から3年が経ち、やっと商品として巣立つことができたのです。
長野県宮田村にある信州マルス蒸留所。「MARS」とはローマ神話における農耕の神であり、まさに水と麦からつくられるウイスキーづくりに、その思いを込めた。
中央アルプスと南アルプスに囲まれた伊那谷は、ウイスキーづくりに最適な環境です。ウイスキーづくりに欠かせないのは、なんといっても最良の水。スコットランドでいくつかの蒸留所を訪れた際も必ず仕込み水を飲ませてもらった島地さんですが、あまりの柔らかさと美味しさに驚いた様子。信州マルス蒸留所の一帯は、大きな花崗岩が多く、その地質によって濾過されミネラル分の少ない水が流れています。

 その硬度は非常に軟水とされる南アルプスよりもさらに柔らかく、30〜40程度。このウイスキーづくりに最適な軟水を、地下120mから伏流水を汲み上げ蒸留に使用しているのです。ちなみに、蒸留所の近くに養命酒の工場があることも、よい水質であることを証明するひとつでしょう。また、標高も800mという高所に位置しており、これは日本一であることはもちろん、もしかしたら世界一高い場所にある蒸留所といえるかもしれません。真夏は33~34℃まで上昇し、冬季はマイナス10℃以下まで冷え込む時もあるそうですが、この寒暖差も、独特の味わいを生む秘密なのです。
創設当時から使われてきたポットスチル。今年11月で新しいものに入れ替えられる。
ニッカウヰスキーが配布している竹鶴ノートのレプリカ。この竹鶴ノートをもとに本坊酒造のウイスキーづくりは始まった。
マルスウイスキーの特徴は、アタックがソフトタッチで、フレーバーのバランスがいい所、と言われています。それは樽の使い方ももちろんですが、やはり蒸留所の心臓部、ポットスチル(蒸留器)にあるのでしょう。実は信州マルス蒸留所のポットスチルの設計には、日本のウイスキーの歴史において重要な存在、岩井喜一郎氏が携わっているのです。岩井氏は、スコットランドで単身ウイスキー蒸留学を学びに渡った竹鶴政孝の大坂高工醸造科時代の先輩にあたり、摂津酒造に卒業後の竹鶴を誘った人物です。そして、摂津酒造時代に、竹鶴をスコットランドへ送り出した張本人。さらに、竹鶴が現地で学んだ蒸留学を丁寧にまとめた、いわゆる“竹鶴ノート”を最初に受け取ったのも実は岩井氏なのです。

 摂津酒造は、ウイスキーづくりに着手するために竹鶴をスコットランドへ送り出しましたが、その夢は叶わず。竹鶴は、寿屋(現サントリー)で山崎蒸留所の創設に携わり、岩井氏はのちに本坊酒造の顧問に就任し、山梨工場におけるウイスキーの設備設計に携わることになったのです。つまり、信州マルス蒸留所のポットスチルは、竹鶴ノートを基に設計された由緒正しきものなのです!

閉鎖前に蒸留された、希少な樽で別注ボトルを。

ポットスチルの蓋部分。多くの締め付けレバーが付いているのも特徴。
岩井氏が設計したポットスチルは日本製で、その特徴はスワンネックと呼ばれるポットスチル上部のパイプ形状にあります。窯から垂直に立ち上がり、しなやかに、やや斜め下へ細くなりながら折れ曲がる。この形状が、原料の成分をダイレクトに取り込みながらも、細くなる部分で銅の触媒効果を高め、スッキリとした味わいに仕上げるのです。写真のポットスチルは、54年前の山梨時代から使用しているものですが、今年11月に新しいポットスチルに入れ替えられます。これがこれまで同蒸留所を支えてきたポットスチルの最後の姿です。
信州マルス蒸留所 所長の竹平考輝さん(左)と、作家・島地勝彦さん(右)。
樽は、ラック式と呼ばれる貯蔵方法で熟成。
樽のヘッド(鏡板)に描かれた蒸留所の名前とカスク番号。ここには約600樽が眠っている。
この蒸留所を仕切るのは、竹平考輝さんです。竹平さんは、特に蒸留学を学んだわけではなく、長野県でビールづくりを行っていました。そして、2011年に蒸留所が再開することをきっかけにウイスキーづくりに携わるようになったのです。

 竹平さんは、「マルスウイスキーは、再開したばかりの小さな蒸留所です。でも、だからこそ、いまはいろいろなことを試していきたい。醸造、蒸留の時間などのほか、さまざまな種類の樽で熟成してみたいと思います。熟成も、貯蔵庫の天井側で寝かせるのか、それとも地面側で寝かせるのかでは、室温も違い、熟成のスピードも異なるのです。ウイスキーづくりは10年、20年という長い年月を必要とします。遠い未来に向けて、少しずつデータを集めていきたいですね」と語っています。「独学でウイスキーづくりを研究するとは、まさに竹鶴政孝と同じ精神。まさにロマンチックな愚か者」と島地さん。
今回、ボトリングされたPenの別注シングルモルト「信州マルス駒ヶ岳 1987 27年」(¥25,920)
蒸留所にてテイスティングを行う、島地勝彦さん(左)と、信濃屋食品バイヤーの北梶剛さん(右)。
本坊酒造では、「駒ヶ岳」シリーズを中心に、さまざまなシリーズを展開している。左から、ブレンデッドウイスキー「ツイン アルプス」(¥1,706)、100%モルト原酒の「モルテージ駒ヶ岳 ピュアモルトウイスキー 10年」(¥5,184)、2011年の再開に蒸留されたモルト原酒を用いた「THE REVIVAL 2011 シングルモルト 駒ヶ岳」(¥10,800)
さて、今回、Penがオリジナルでボトリングした「信州マルス駒ヶ岳 1987 27年」(¥25,920)を紹介しましょう。これは、1992年に休止状態に陥る前の1987年に蒸留された、本当に希少な樽。これを加水しないシングルカスクでボトリングしました。熟成樽の詳しい履歴は不明ですが、スコットランドで一度使われたリフィル樽を用いたもののようです。島地さんは「なんだか謎めいていいな。ひょっとして、ボウモアとかラフロイグみたいな名門にあった樽かもしれないね」と心を躍らせます。

 熟した果実のようなフルーティな香りと、複雑な味わいが調和した、長期熟成ならではの濃厚な味わい。蒸留所の歴史に思いを馳せて飲めば、より奥深い味わいになるでしょう。ラベルは、“サロン・ド・シマジ”のトレードマークであるドクロマークを。「人生は冥土までの暇つぶし。どうせなら極上の暇つぶしを」と常々語っている島地勝彦さん。そんな島地さんの言葉を体現するには、ふさわしい一本と言えるでしょう。限定249本で、ただいま予約受け付け中です。

「信州マルス駒ヶ岳 1987 27年」(¥25,920)は、ただいま予約中!

信濃屋食品
※信濃屋食品・本店ワイン館(TEL:03-3412-2418)ほか、銀座店、新宿店、目黒店など各店舗で販売します。
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信濃屋食品 オンラインショップ
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※店舗、オンラインともに、発売開始は11月14日からとなります。