東京・表参道の新ショップ誕生の密着レポート【後編】は、フランスの店舗設計者やアメリカのシューズデザイナーが登場。「SHISEIDO MEN」や施工段階の店舗風景など盛りだくさんの内容でお届けします。
急ピッチで施工が進んだ4月。
レショップがオープンしたのは2015年4月25日。上段の写真2点はその約2週間前の施工の様子です。地下1階から2階までのフロアはどれも天井が高く、施工業者の人たちは長い脚立に登り、急ピッチで作業を進めていました。大きなガラスから自然光が降り注ぐフロアは2階( 1点目写真)。手前にある車輪付きの台は、フランスの屋台を模した、商品を並べるラックです。
内装の核となるのが、2点目の写真のインダストリアルな棚「606 ユニバーサル・シェルビング・システム」。現在はイギリスのロンドンに拠点を構える、ドイツ発のオフィス家具メーカー「ヴィツゥ」を代表する移動式のシェルビングシステムです。インダストリアルデザイナーのディータ・ラムスが1960年にデザインした機能的なシステムは、決して主張し過ぎることなく、ラックとしての無機質な役割を果たしています。レショップではこの高級システムを輸入して、階段の手すりのパネルに至るまで店全体に使用しています。
内装の核となるのが、2点目の写真のインダストリアルな棚「606 ユニバーサル・シェルビング・システム」。現在はイギリスのロンドンに拠点を構える、ドイツ発のオフィス家具メーカー「ヴィツゥ」を代表する移動式のシェルビングシステムです。インダストリアルデザイナーのディータ・ラムスが1960年にデザインした機能的なシステムは、決して主張し過ぎることなく、ラックとしての無機質な役割を果たしています。レショップではこの高級システムを輸入して、階段の手すりのパネルに至るまで店全体に使用しています。
階段の踊り場から1階フロアを見下ろした様子を、時系列を逆にして並べてみました。床の保護シートが取り除かれ、ユニークなブルーとイエローのタイルの床が顔を出すと、それまでの風景が一変して、イメージされた伝統的なパリの食料品店(エピスリー)のムードが出現。だまし絵のような立体感のあるこのタイルも特別注文による輸入品で、塗装による特殊な色付けで製造されたものです。
実店舗に大満足の設計主、カット アーキテクチャー
店舗設計を手がけたフランスの設計会社「カット アーキテクチャー」の2人(右:ベンジャミン・クラレンス、左:ヤン・マーティン)。彼らはパリの飲食店の設計を多く手がけ、有名サードウェーブカフェ「クチューム(Coutume)」を担当したことでも知られています。レショップを運営する「ベイクルーズ」との付き合いは、ベイクルーズが表参道に「クチューム青山店」をオープンさせて設計を依頼したときからになります。
「素晴らしい出来栄えですね!このプロジェクトに関われたことを本当に幸せに感じています」と2人。「地下から2階までのフロアはどれも内装が異なりますが、実は色彩でリンクさせています。キーとなる色はブルー。2階の天井の色、1階のタイルの色、地下の床の色がどれも青なのです」
内装で彼らが特に気に入っているのが1階の床。「このタイルは、フランスで製造されています。通常のタイルと違ってコンクリートの塊で、すり減っても色がなくならないように工夫されたもの。1個1個の色が少しずつ異なっているのも好きです。これを初めて使ったのは、パリに3軒あるニューヨークスタイルのハンバーガー屋『PNY』でした」
「素晴らしい出来栄えですね!このプロジェクトに関われたことを本当に幸せに感じています」と2人。「地下から2階までのフロアはどれも内装が異なりますが、実は色彩でリンクさせています。キーとなる色はブルー。2階の天井の色、1階のタイルの色、地下の床の色がどれも青なのです」
内装で彼らが特に気に入っているのが1階の床。「このタイルは、フランスで製造されています。通常のタイルと違ってコンクリートの塊で、すり減っても色がなくならないように工夫されたもの。1個1個の色が少しずつ異なっているのも好きです。これを初めて使ったのは、パリに3軒あるニューヨークスタイルのハンバーガー屋『PNY』でした」
ラックについてのこだわりはどうでしょうか?「陳列棚をディータ・ラムスのシステムにしたのは、置く商品を見やすくするため。在庫をストッキングできるようにしつつ、店内に縦横ラインの空間もつくりたかったのです」
エピスリーから発想したディテールもふんだんに取り入れられています。「パリの食料品店の店先はひさし(オーニング)が張られています。レショップの2階の天井に布を張り巡らせて、このイメージを表現しました。布の隙間から覗く、イメージカラーのブルーがこだわりですね」
2人にとって、青山という、東京でも一等地のファッションタウンで仕事をできたことも、大きな喜びがあるそう。「実に光栄なことです。何と言っても、青山は世界でいちばんキレイな街ですから!」
2人にとって、青山という、東京でも一等地のファッションタウンで仕事をできたことも、大きな喜びがあるそう。「実に光栄なことです。何と言っても、青山は世界でいちばんキレイな街ですから!」
NYからシューズデザイナーもやってきた商品説明会。
レショップの品揃えの中で全身のコーディネートを考えたとき、足元の軸になるのは日本初上陸のアメリカ発スリッポン「サバ」です。モロッコの伝統的なスリッパシューズを原型にして、ファッション性を高めたもの。トルコの都市、ガズィアンテプで、ハンドメイドで製造されています。やわらかく足に馴染むこのシューズは、夏の素足履きにぴったりでしょう。レショップはバリエーションを豊富に買い付けており、オープニングの目玉としてポップ・アップ・ショップを開催しました。このイベントのために日本にやってきたのが、サバを考案したミッキー・アシュモア(上写真)。オープニングの前日には自ら積極的に働いて、ベストな見え方になるようにディスプレイしていました。
夜にはスタッフを集めた説明会が開催されました。素足履きのための最適なサイズ選びのコツや、ブランドの世界観、フィッティングのノウハウなどがレクチャーされました。上に掲載した、この場の様子を収めた1分未満の短い動画もご覧ください。靴の臭いフェチ(?)の男たちが愉快に盛り上がっています(笑)。
セレクトショップでは、新店舗が誕生するときやシーズン立ち上がりのときに、バイヤーによる各商品の説明会も開催され、ショップスタッフがアイテムを理解するのに欠かせない機会となります。レショップでも品物が揃ったオープン後の日程で、バイヤーの金子恵治さんが商品を一つひとつ説明する時間が設けられました。しっかりと頭に入れる人、ノートを取る人など、説明に向き合う姿勢は人それぞれ。このときは逆に、ショップスタッフからの接客したお客さんの意見もフィードバックされ、金子さんの今後の企画や買い付けの重要なヒントになったようです。
「SHISEIDO MEN」の全アイテムが揃う売り場が誕生。
日本人の肌を知り尽くした資生堂が展開するスキンケアブランドの中で、2004年に誕生した比較的若いメンズブランドが「SHISEIDO MEN」です。デイリーに肌を整える化粧水、保湿液、洗顔料はもちろん、日焼け止めの美容液やリップクリーム、整髪料、オードトワレまでが用意された、男性向けに必要なものが揃ったプレステージラインです。このたびレショップの誕生と同時に、地下フロアに全アイテムを揃えたショップ・イン・ショップが設けられました。実は資生堂が百貨店以外のセレクトショップでこうした売り場を設けるのは初の試みなのです!フロアには資生堂の研修を受けた専任スタッフがいて、肌質を測れる計測機器もあり、相談しながら自分に合う製品を探すことができます。
内装もカット アーキテクチャーの仕事です。深海をイメージした青い床の上に流氷が浮かぶような、ディープな空間を演出しています。
内装もカット アーキテクチャーの仕事です。深海をイメージした青い床の上に流氷が浮かぶような、ディープな空間を演出しています。
シリーズの中で最高峰は、エイジングケアに特化した顔用クリームの「スキンエンパワリングクリーム」(50g ¥12,960)です。この売り場で現在人気を集めているのは、シェービングクリームとしても使える洗顔フォームの「クレンジングフォーム」(130g ¥2,160)。気軽に試したい初心者の方は、洗顔料、保湿ローション、保湿クリームがセットになった「スキンケアキット」(¥3,240)(上写真)はいかがでしょうか。しっとりタイプの「スキンケアキットH」(クレンジングフォーム30g、ハイドレーティングローション30mL、トータルリバイタライザー15g)と、さっぱりタイプの「スキンケアキットT」(クレンジングフォーム30g、トーニングローション30mL、トータルリバイタライザー15g)の2種類があります。
レショップの売り場では、ファッションの販売スタッフが接客することもあります。そのため、汐留にある資生堂の本社にて、ベイクルーズの関係者を集めた特別な説明会が行われました。スライドを使い、資生堂の歴史やブランドの概要が、グローバルプレステージブランド事業部の倉本直志さんより解説されました。その後、パッケージやビジュアルなどのデザインを担当し、現在は独立して活動している元資生堂アートディレクターの工藤青石さんも特別参加して、自身の口によりクリエイティブな詳細が語られました。説明会の終盤は、和やかに盛り上がった実習タイムです。プレステージ事業本部の芝﨑理恵さんと矢尾恵理子さんが、ローションの付け方などを実演しました。自分の肌で体感したレショップのスタッフたちは皆、笑顔ながらも真剣に、つけ心地や接客のやり方を学んでいました。
前篇・後編とお送りしたレショップのレポートはこれで終了です。店造りの舞台裏には、まだまだたくさんのエピソードがあります。ファッションの店という存在に興味をもった人、ワクワクするアイテムと出会いたい人は、どうぞ青山にお出かけください。ゆっくりと店内を巡り、什器やディスプレイに目をやり、スタッフとの会話を楽しんで時間を過ごしてはいかがでしょうか。(高橋一史)
L'ÉCHOPPE(レショップ) 青山店
東京都港区南青山5-5-4
TEL:03-5778-3522
営業時間:11時~20時
不定休
※レショップ青山店は、2015年9月18日付けで移転しました。
新住所:東京都港区南青山3-17-3 1階(電話番号、営業時間、定休日は変更なし)
http://lechoppe.jp/