衣・食・住をテーマに民藝を紐解き、現代のライフスタイルへの広がりを探る『民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある』展【Penが選んだ今月のデザイン】

  • 文:高橋美礼(デザインジャーナリスト)

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01_04.緑黒釉掛分皿ほか.jpeg
国内外を問わず柳宗悦らが集めた民藝から約150件の名品にも改めて注目。上から:緑黒釉掛分皿 因幡牛ノ戸(鳥取、1931年頃)、流描皿 河井寬次郎(京都、1927-28年頃)、藍鉄絵紅茶器 濱田庄司(栃木、1935年頃)、食器棚(イギリス、19世紀)/いずれも日本民藝館蔵 photo: Yuki Ogawa

約100年前に柳宗悦が濱田庄司や河井寛次郎ら仲間とともに創始した民藝運動。「名も無きつくり手たちが生み出す日用品にこそ『美』が宿る」という思想で目を向けた国内外の民藝品は、器から衣類、道具、家具まで幅広く暮らしの中で生まれ、使われてきたものばかりだ。こうした日々の生活に宿る美を感じ取り、素材や産地の人々に思いを寄せた民藝運動のコンセプトは、現代にも確実に受け継がれていると言っていい。昨年、大阪中之島美術館からスタートした本展は、現代の民藝にまで焦点をあてる展示構成が特徴的だ。

「思想家として民藝運動を牽引した柳が亡くなったから終わりなのではなく、彼らの活動はいまなお影響を与え続けています。実際に当時からのものづくりを変えずに続けている産地もあれば、一度は途絶えたけれど、現代に復活した民藝もあり、その一方でインテリアセレクトショップでも世界中の民芸品が多く扱われているように、とても身近なものなのです。この展覧会を通して歴史的な民藝の側面だけでなく、より私たちのいまの視点から暮らしの中の民藝を捉えてほしいと考えました」と、本展を監修した美術史家の森谷美保は語る。たとえば、かつて柳が民藝を活かす手立てとして室内空間ごと展示した『生活展』(1941年日本民藝館にて開催)は、現代のテーブルコーディネートに通じる発想であり、ライフスタイルの提案そのもの。会場ではその様子も再現される。

「日常的に日本人が使ってきたものがこれほど美しいのになぜ気づかないのか、と柳は伝えたかったのではないでしょうか」

大分県の小鹿田(おんた)焼や兵庫県の丹波布など現代のつくり手に加え、近年の民藝ブームに火をつけたテリー・エリスと北村恵子(MOGI Folk Art)によるインスタレーション空間も見どころだ。

『民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある』

開催期間:~6/30
会場:世田谷美術館1、2 階展示室
開館時間:10時~18時 ※入場は閉館の30分前まで 
休館日:月曜日(4/29、5/6は開館)、5/7
料金:一般¥1,700 
https://mingei-kurashi.exhibit.jp

※この記事はPen 2024年6月号より再編集した記事です。