火星の衛星フォボスへも着陸間近? JAXAが進める、宇宙開発の現在

  • 文:荒舩良孝
  • 編集:井上倫子

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NASAが率いるアルテミス計画を筆頭に、加速する宇宙開発。ついに宇宙旅行が夢ではなくなってきている現在、日本のJAXAが進めているプロジェクトをご紹介しよう。

Pen最新号は『いまここにある、SFが描いた未来』。SF作家たちは想像力の翼を広げ、夢のようなテクノロジーに囲まれた未来を思い描いてきた。突飛と思われたその発想も、気づけばいま次々に現実となりつつある。今特集では人類の夢を叶える最新テクノロジーにフォーカス。SFが夢見た世界が、ここにある。

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H3ロケット試験機2号機の打ち上げの様子。これからさまざまな人工衛星や探査機を宇宙へ送る。 photo: JAXA

2024年2月、H3ロケット試験機2号機が大空高く舞い上がり10年をかけた開発にひと区切りがついた。H3ロケットは、日本が30年ぶりに開発した新しい液体燃料ロケット。年6回ほどの頻度で打ち上げることを目指す。03年に誕生し、日本の航空宇宙開発政策を担うJAXAでは、人工衛星などの宇宙機を開発している。それらを運ぶロケットは、重要な開発のひとつだ。

日本が宇宙開発に着手したのは世界の中でも早く、1970年には人工衛星「おおすみ」の打ち上げを成功させた。これは当時、世界で4番目の快挙だった。その後、アメリカとの協力関係を深めながら宇宙技術を習得し、92年に毛利衛宇宙飛行士が日本人として初めてスペースシャトルに搭乗。94年には日本初の純国産液体燃料ロケットH-Ⅱの開発に成功した。

日本は国際宇宙ステーション(ISS)に参加し、「きぼう」の日本実験棟の製造をし、運用を担当している。「きぼう」では、地上ではできない科学実験をいくつも実施している。ISSには日本人宇宙飛行士が建設時から滞在し、いくつものミッションに貢献してきた。さらに、補給機「こうのとり」を開発し、ISSへの物資輸送の一端も担った。

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ISSでの実証実験が進められているビデオカメラシステム「Int-Ball2」。ISS内を飛びまわり、宇宙飛行士の代わりに写真や動画を撮影し、宇宙飛行士の負担を軽減する。 photo: JAXA / NASA

有人宇宙活動のノウハウを蓄積してきた日本は、アルテミス計画にも参加する。月面に人類を送り、月での持続的な活動を目指すものだ。

日本は、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の国際居住棟に設置する「環境制御・生命維持システム」などを提供する予定だ。このシステムは、国際居住棟内の温度・湿度の調整、二酸化炭素除去などの機能を備え、宇宙での暮らしに欠かせないとても重要な設備だ。

また、ISS向けに開発している新型補給船「HTV-X」を活用したゲートウェイへの物資補給も検討している。アルテミス計画では、日本人宇宙飛行士のゲートウェイ滞在や月面着陸も予定されており、日本の有人宇宙活動がさらに発展することだろう。

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新型補給船「HTV-X」のイメージ図。HTV-Xを活用したゲートウェイへの物資補給も検討している。 photo: JAXA

26年度には火星衛星探査計画(MMX)が予定されている。火星の衛星であるフォボスに探査機を着陸させ、岩石サンプルを地球に持ち帰るサンプル・リターン計画だ。火星にはたくさんの探査機が着陸しているが、衛星であるフォボスに着陸し、サンプルを持ち帰るのは世界初の試みだ。

火星にはフォボスとダイモスの2つの衛星があるが、その起源はよくわかっていない。MMXでフォボスのサンプルを持ち帰ることで、2つの火星衛星の起源だけでなく、初期の様子や太陽系の中での小天体の動きなどがわかるのではと期待されている。宇宙関連予算の少ない日本は、工夫を重ね世界と渡り合っている。今後の動向に注目していきたい。

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火星衛星探査計画(MMX)のイメージ。MMXは火星の衛星であるフォボスのサンプルを採取し、地球へ持ち帰る。2026年度に実施予定だ。 photo: JAXA

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