電気自動車が切り拓く、新しい時代の景色

  • 編集&文:倉持佑次

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家電メーカーなど異業種も参入し、世界的なEV(電気自動車)シフトが進行している。見慣れたクルマのデザインが劇的に変わりつつあるいま、必見のモデルを紹介しよう。

Pen最新号は『いまここにある、SFが描いた未来』。SF作家たちは想像力の翼を広げ、夢のようなテクノロジーに囲まれた未来を思い描いてきた。突飛と思われたその発想も、気づけばいま次々に現実となりつつある。今特集では人類の夢を叶える最新テクノロジーにフォーカス。SFが夢見た世界が、ここにある。

『いまここにある、SFが描いた未来』
Pen 2024年6月号 ¥880(税込)
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1. Honda SALOON
ホンダ サルーン

2026年から北米市場を皮切りに、グローバルに展開する「Honda 0(ゼロ)シリーズ」。開発アプローチの「Thin, Light, and Wise(薄い、軽い、賢い)」を体現するコンセプトモデルのサルーンは、スポーティなデザインと広い室内空間を両立し、ホンダ伝統のM・M思想(人間を主役にする設計思想)を継承。インパネはシンプルで直感的な操作が可能なヒューマン・マシン・インターフェースを採用し、EV時代における究極の「操る喜び」を追求している。

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photo: HONDA
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photo: HONDA

2. Tesla CYBERTRUCK
テスラ サイバートラック

テスラ初の電動ピックアップトラック。最大の特徴は、エッジが立った外観デザインと、高強度なステンレス鋼を外観パネルに採用している点で、アーマーガラスは112㎞/hで飛ぶ野球ボールの衝撃にも耐えるタフネスさを誇る。インテリアでは、フロントとリヤにインフォテインメント用タッチスクリーンを設置。2023年12月にアメリカでデリバリー開始。ピックアップトラックが圧倒的な人気を誇る同国で、本格的なEV化を招くきっかけとなるのか期待される。

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提供元: Tesla Inc.
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提供元: Tesla Inc.

3. Xiaomi SU7
シャオミ エスユーセブン

中国の家電メーカー、シャオミによるEV進出の第一弾モデル。独自開発したHyperOSの採用により、スマホや家電とのシームレスな連携を叶える。自動運転領域でも同社のテクノロジーをふんだんに投入し、最上級グレードであるSU7 MAXには、LiDAR(レーザーレーダー)、11台の高解像度カメラ、3台のミリ波レーダー、12台の超音波レーダーを搭載。2024年3月、標準モデルの価格を21万5900元(約450万円)と発表し、発売開始27分で5万台の注文を獲得した。

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photo: XIAOMI
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photo: XIAOMI

4. Sony Honda Mobility AFEELA
ソニー・ホンダモビリティ アフィーラ

「リアルとバーチャルの世界を融合すること」をポイントに開発が進められているアフィーラは、運転支援システムのシミュレータにAR技術を組み合わせることで、車内にいながら没入感のある体験を楽しむことができる一台。CES 2024のプレスカンファレンスでは、PlayStation 5用のコントローラーを使ってプロトタイプを遠隔操縦する技術デモが披露された。第一号モデルは2026年春から北米で、同年後半に日本でのデリバリー開始を目標としている。

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photo: SONY HONDA MOBILITY
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photo: SONY HONDA MOBILITY

5. BYD BYD ATTO 3
ビーワイディー ビーワイディー アットスリー

世界有数のリチウムイオン電池のメーカーとして、世界的に知られる中国企業のBYD。2022年に中国で販売を開始したミドルサイズSUVのアットスリーは、同社が独自開発したブレードバッテリーを搭載したEV専用のプラットフォーム「e-Platform 3.0」を採用し、470㎞の航続距離と高い安全性、フラットな床面によって広い車内空間と440Lの荷室容量を実現している。インテリアでは15.6インチの大型タッチスクリーンを採用。快適かつ楽しい移動体験を提供する。

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photo: BYD
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photo: BYD

6. Bollinger Motors B2
ボリンジャー・モーターズ ビーツー

アメリカに本拠を置くボリンジャー・モーターズは、道なき道を走破することに特化したEVの開発を行う新興メーカー。ピックアップトラックタイプのB2は、エクステリアからインテリアまでシンプルかつ無骨なデザインで統一される。エンジンを廃したEVの特性を活かし、前方から後方まで車体を完全に貫通するかたちで、全長5m近い長尺物の積載が可能。残念ながら現在はコンセプトカー止まりだが、オフロードファンの理想が詰まった魅力的なモデルだ。

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photo: BOLLINGER MOTORS
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photo: BOLLINGER MOTORS

7. AC Future eTH
エーシーフューチャー イーティーエイチ

太陽光発電と空気中の水分を抽出する機能で、7日間スタンドアロンで生活できるキャンパー。eTHは「Electric Transformer House」を意味し、車輪のついた家というコンセプトを持つ。注目すべきは、フェラーリやアルファロメオの名車を手掛けたカロッツェリア、ピニンファリーナがデザインを担当していること。ピニンファリーナはクルマだけでなく、家電やキッチン、超高級マンションの内装なども手掛けているので、そのノウハウが存分に活かされている。

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photo: AC FUTURE

ライフスタイルに寄り添う、ルックスと機能性

近年、電気自動車への注目度がますます高まっている。背景には、環境問題への意識の高まり、石油資源への依存度低下、技術革新による性能向上、政府の政策支援など、さまざまな要因が絡んでいる。自動車ジャーナリストのサトータケシ氏は、未来のクルマのデザインは、持続可能なエネルギー源と革新的な技術の導入によってかたちづくられると語る。

「サイズが小さく、配置の制約が少ないバッテリーとモーターで構成される電気自動車は、エンジン式の乗用車に比べてはるかにデザインの自由度が高まります。たとえば、駆動輪にそれぞれモーターを配置してタイヤを直接動かすようになれば、球型でもピラミッド型でも、どんなデザインでも成立するようになる。さらに、電気信号でタイヤ角を変えるステア・バイ・ワイヤという技術の実装によって、ハンドルを取り払い、ジョイスティックやゲーム機のコントローラーを使ってクルマを操縦することも可能になります」

クルマのインテリアデザインが自由になった未来では、自動運転技術との融合により、ソファの上でゲームや映画を楽しみながら移動することも夢ではない。新たなモビリティサービスの誕生が期待されている電気自動車は、私たちの日常を大きく変える可能性を秘めているのだ。

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