SF映画の中で描かれた未来のテクノロジーは、本当に実現可能なものなのか? 誰もが気になるその問いを物理学者が検証、わかりやすく解説する。
Pen最新号は『いまここにある、SFが描いた未来』。SF作家たちは想像力の翼を広げ、夢のようなテクノロジーに囲まれた未来を思い描いてきた。突飛と思われたその発想も、気づけばいま次々に現実となりつつある。今特集では人類の夢を叶える最新テクノロジーにフォーカス。SFが夢見た世界が、ここにある。
『いまここにある、SFが描いた未来』
Pen 2024年6月号 ¥880(税込)
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タイムトラベルやワープといえば、SF映画に欠かせない重要なエレメントだ。科学的な根拠と照らし合わせた時に、それらの概念はどこまで実現可能なのか? 物理学者の山崎詩郎に、忖度なしの科学考証をお願いした。
「過去へのトラベルは因果律に反することになるので、現時点では不可能とされています。しかし未来へのトラベルであれば、比較的簡単に実現可能です。それは高速で移動をすると時間が遅く進む“特殊相対性理論”と、重力が時間を遅らせる“一般相対性理論”によって説明できます」
自分の周りだけ時間の流れが遅くなる環境に身を置けば、そこから脱した時に、未来の時間軸へとトラベルすることになる。
「とはいえ、いざ人間が何年も先の未来へとトラベルするとなると、まずは超光速で移動し続けるための技術や、巨大な重力をもつブラックホールを見つけ、それに近づくための手段から講じていく必要があります。ワープに関しても、SF映画の中では超光速航法やワームホールを用いた手法が表現されていますが、そもそも相対性理論ではいかなる物質も光速を超えることができないとされていますし、ワームホールの存在も未確定な状態ということもあり、まだ実現は難しそうです」
ただし、このようなアイデアの中には、“人間が体験する”という前提さえ覆してしまえば、にわかに現実味を帯びてくるものも多いと山崎は言う。
「人間の弱点は、寿命が100年程度で、環境の変化に弱いことですが、1000年後には、寿命が無限で、宇宙で生きられる、超知能機械生命体が生まれているはずです。彼らは、光速に近づいてタイムトラベルしたり、惑星をテラフォーミングしたりするのに、1億年待つこともできるんです」
我々人類が最初に遭遇する宇宙文明は、どこかの星で生まれた機械生命体かもしれない。それが地球の侵略のために攻撃を仕掛けてくるという展開もまた、SFの世界では鉄板ネタだ。テクノロジーの進化のための第一歩は、あるべき未来のかたちを想像すること。SF映画は、それを促す最高の起爆剤なのだ。
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