大樋焼十一代大樋長左衛門と次期十二代奈良祐希による、初の二代展が麻布台ヒルズで開催

  • 文:佐野慎悟

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大樋焼十一代大樋長左衛門と奈良祐希による二代展「祈器(きき)」のために、奈良が能登ヒバを使って制作した新作。奈良祐希《Bone Flower_NotoHiba》2024年 ©Kensei Hanafusa

石川県金沢市で350年以上続く茶陶の名門、大樋焼十一代大樋長左衛門と、次期十二代の奈良祐希による二代展「祈器(きき)」が、麻布台ヒルズ ギャラリースペースで4月27日から5月23日まで開催される。親子二代で取り組む初めての展覧会では、それぞれが能登半島地震の震災後に焼き上げた最新作を初公開する。

今年の元旦に起きた震災では、歴代の作品が多数損壊したほか、大樋美術館、ギャラリー、工房など各所に甚大な被害を受けた大樋窯では、いまも復興にむけた作業が進められている。しかしそのような環境下でも、十一代は損壊した歴代作品の破片や断片をコラージュしたオブジェを生み出し、十二代は復興への祈願を込めて代表作の「Bone Flower」を能登ヒバを使って制作するなど、決して創作活動を止めることはなかった。

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十一代大樋長左衛門が本展覧会のために制作したのは、能登半島地震によって損壊した大樋焼歴代作品の破片や断片をコラージュしたオブジェ。大樋長左衛門《転生茶盌》2024年 ©Kensei Hanafusa

 この展覧会の開催にあたって、奈良祐希は次のようなコメントを寄せている。

「大自然の営み、人知では計り知れない自然現象を前に、原始・古代の人々は驚き、恐れ、感動を繰り返したに違いありません。そしてそこに“見えない力”を感じとったのです。それが精霊であり、神です。やがて、彼らは社会の安定と維持のため神を祀り、神話を生み、神々と交歓する儀礼を独自に発達させていきました。原始・古代の人々が遺した縄文土器を始めとする『祈りの器』は、私たち現代人にはその意味や使い方すら理解できないものも多数存在します。しかし今回の震災を経て、私も人と自然の関わり方を深く考える中で、現代における『祈器』を創りたいという想いが込み上がってきました」

昨年10月に十代大樋陶冶斎が95歳で鬼籍に入り、さらにその数ヶ月後に震災を経験した親子が、復興への祈りを込め初めて開催する二代展。350余年の歴史を持つ名門が未来に向かって力強く前進していく姿を、ぜひその目で目撃してほしい。

 

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十一代大樋長左衛門(左) 奈良祐希(右)©Ohi museum

展覧会会期中には、同会場内でチャリティ茶会とトークイベントが開催予定。

インスタントハウス×チャリティ茶会

能登半島地震の被災地域で実際に使用された「インスタントハウス」を会場に設置し、その中で裏千家インターナショナルアソシエーションによる茶会を開催。

5月10日(金) 11時〜16時30分

5月11日(土) 11時〜16時30分

トークイベント

十一代大樋長左衛門と奈良祐希がゲストを迎え、震災を通していま考えていること、復興に向けた取り組みや想いを語るトークイベント。

5月17日(金) 14時〜15時30分

 

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石川県金沢市にある十一代 大樋長左衛門窯・大樋美術館・大樋ギャラリー。歴代の大樋焼と加賀金沢の茶道文化にふれることができる。©Kensei Hanafusa

『祈器(きき)』

会期:4月27日(土)〜5月23日(木)

会場:麻布台ヒルズ ギャラリースペース(麻布台ヒルズ ガーデンプラザA 地下1階)

開館時間:10時〜20時

入館料:無料